ランニングによる膝の痛みの原因と対策

「ランニングを始めてから膝が痛くなった…」
「走るといつも膝が痛くなる…」

こんなお悩みありませんか?

実は、ランニングをされている方の中で一番多いお悩みが膝の痛みです。

これは、『ランナー膝』と呼ばれるランニングによって発生しやすい代表格の症状になります。

では、どうして多くのランナーさんが膝の痛みに悩まされてしまうのでしょうか?

ここでは、ランニングによる膝の痛みの種類と症状、その原因と対策を解説していきたいと思います。

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膝の痛みの症状と発症原因

腸脛靭帯炎

ランニングを始めて膝の外側に痛みが出ている場合、それは『腸脛靭帯炎』という症状になります。

発症初期の段階では、ランニング中に痛みが出ても、しばらく休むと治まる程度ですが、次第にランニング後にも痛みを感じるようになって、悪化すると慢性化して日常生活にも支障をきたす場合があるので注意が必要です。

腸脛靱帯というのは太ももの外側にある大きな靭帯で、膝の曲げ伸ばしをする度に、大腿骨の外側にある骨の出っ張り・大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)の上を前後に動くのですが、ランニングなどで膝の屈伸を繰り返すことによって、この腸脛靱帯と大腿骨外側上顆が擦れ合って、摩擦が起こることで炎症が起きて痛みが発生します。

ちなみに、「腸脛靭帯炎」は、正確な医学用語ではなく、「腸脛腓腱筋腱膜炎」という症状のことを指しています。

腸脛靭帯炎が発症する主な要因

・局所への過度なストレス:
特にランニングやジャンプ運動を伴うなどのスポーツ活動において、腸脛腓腱筋腱膜に過度の負荷がかかることで炎症が発生します。

・筋肉の問題:
腸脛腓腱筋周囲の筋肉(主に大腿四頭筋)の弛緩性が不十分な場合、腱膜に余分な負荷がかかり、炎症が発生する可能性が高まります。

・過度なストレッチ:
膝関節を過度にストレッチすると、腸脛腓腱筋腱膜に負荷がかかり、炎症が引き起こされる可能性があります。

腸脛靭帯炎の主な症状

・膝の外測や周囲に痛みや腫れが生じる
・膝の動かし始めやランニング時に痛みが強まる
・長時間の座位や立位でいると痛みが増すことがある
・腱膜に触ると痛みを感じることがある

鵞足炎

腸脛靭帯炎とは逆に、膝の内側(下方)に痛みを伴っている場合は、『鵞足炎』という症状になります。

「鵞足」というのは、脛骨というスネの骨の内側(膝から5-7㎝ほど下)に位置していて、縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる3つの筋肉の腱が骨に付着している部位(付着部)になります。

そして、この部位にある滑液包に炎症が生じてしまっている状態が鵞足炎になります。
滑液包というのは、膝などの関節に存在する小さなゼリー状の袋で、骨と軟骨組織の摩擦を軽減するクッションの機能を果たしているのですが、炎症によってクッション機能が低下してしまうと痛みが発症します。

鵞鳥炎が発症する主な要因

・急激な運動量の増加:
膝の曲げ伸ばしを要する動作が主のランニングでは、急に走行距離を増やしたり、局所に負荷をかけたりすると、炎症が起こることがあります。

・ハムストリングの硬さ:
ハムストリングの筋肉が硬い人は、膝を曲げ伸ばしする際により多くの筋発揮が必要となってしまって、ハムストリングと関連する鵞足周辺に炎症が発生する可能性が高まります。

・足部のアライメント不良:
足部を外側方向に向けたポジションを取ったまま(ガニ股)走ってしまうと、鵞足周辺に負荷がかかり、炎症が引き起こされるリスクが高まります。

鵞足炎の主な症状

・膝の内測や周囲に痛みや腫れが生じる
・膝の内側や後ろに突っ張り感がある
・膝の動かすと引っ掛かるような違和感や痛みを感じる
・膝の内側下方を触ると痛みを感じる

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)

膝蓋靭帯炎は、太ももの外側を広くおおっている膝蓋靭帯と、太ももにある大腿骨がこすれて炎症を起こす症状です。

ランニングやジャンプ運動を長時間繰り返すことで発生するため、『ジャンパー膝』とも呼ばれています。

膝蓋靭帯は、膝蓋骨から脛骨に伸びる重要な組織で、脛骨と膝蓋骨を繋いで、膝の曲げ伸ばし運動を支える役割を果たしているのですが、この部分が炎症してしまうと、膝関節中央部を中心に痛みが発生します。

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)が発症する主な要因

・局所への過度なストレス:
特にランニングなどのスポーツを行う際に、膝に繰り返し負担がかかることが原因となります。
過度な負荷をかけながらの膝の曲げ伸ばし動作を行うことで炎症が発生します。

・筋肉の問題:
膝周辺の筋肉(特に大腿四頭筋や腸脛腓腹筋)に硬さがみられて正常に機能していない場合に、膝蓋靭帯に負荷がかかりやすくなって、炎症が引き起こされる可能性が高まります。

・血管の増大:
ジャンプや着地の動作を繰り返すと、膝蓋腱が引っ張られて、腱の中で小さな傷が生じてきます。
そうすると、その傷を治すために血管が増えてきます。
通常は、傷が治ると増えた血管も消滅するのですが、しっかりとリカバリーしないと、できた傷が治る前に新たに損傷ができてしまい、血管が減る暇がなく増え続けてしまいます。
血管が増えると、それと一緒に神経線維も増えてしまうため、それが原因で痛みを発症することがあります。

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)の主な症状

・膝の前部や膝蓋骨の下に痛みが生じる
・膝を伸ばしたり曲げたりする際に痛みが強まる
・ランニングを行った後や長時間の休息後に痛みが増す
・膝の周りに腫れが生じることがある

変形性膝関節症

変形性膝関節症というのは、膝関節の軟骨がすり減ったり、関節が変形したりすることで、膝の内側や外側に炎症や痛みを生じる疾患です。

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨の変性や腐敗が進行して、痛みや機能障害を引き起こす比較的に症状が重いケガになります。

O脚が多い日本人の場合、内側の軟骨が減りやすいため、内側に痛みや炎症が発症するケースが多くみられます。

変形性膝関節症が発症する主な要因

・加齢:
加齢に伴って、関節軟骨は摩耗しやすくなります。
膝関節の使用と共に、軟骨の再生能力が低下し、腐敗が進行して痛みが生じます。

・局所への過度なストレス:  
運動不足から急に負荷の高い運動を始めたり、肥満などで膝関節に負担がかかったりすることで、変形性膝関節症のリスクが高くなります。

・怪我や外傷:
膝関節を負傷したり手術を受けたりすることで、関節の構造が変化すると、変形性膝関節症のリスクは増加します。

変形性膝関節症の主な症状

・膝の痛みやこわばり
・膝の可動域の制限
・関節の腫れや炎症
・膝の変形
・膝が上手く機能しない感覚や不安定感

膝の痛みが発症しやすい走り方と対処法

ランニングは全身運動なので、膝に痛みが出てしまう原因というのは一面的ではないのですが、膝を怪我してしまう人は、その走り方に幾つかの特徴があります。

ここでは、その代表的な特徴をご紹介してみたいと思います。

筋肉を正しく使えていない

ランニングで膝に痛みが発症してしまう人の走り方の代表格としてあるのが、走る際に使う筋肉を間違えているというのがあります。

人間の身体には『アクセル筋』と呼称される筋肉と、『ブレーキ筋』と呼称される筋肉があります。

読んで字の如く、身体を前方へ進めるための筋肉をアクセル筋と呼んで、身体の動きをストップさせるために使う筋肉をブレーキ筋と呼びます。

膝を痛めてしまうランナーさんは、このアクセル筋とブレーキ筋の使い方が真逆になってしまっているケースがほとんどです。

例えば、ランニングで脚(股関節など)を操作する時には多くの方が大腿四頭筋をメインに使ってしまっているのですが、実は大腿四頭筋はブレーキ筋で、身体の動きをストップする時に使う筋肉になります。

ランニング時など身体を前進させる時には、本来は、ハムストリングや大臀筋などのアクセル筋をメインに使うのが機能解剖学的には正解となります。

走る際に大腿四頭筋をメインに使ってしまうと、推進力や体重移動を制御してしまうので、より多くのエネルギーを必要としてしまいます。
これでは、車に例えるとサイドブレーキを引きながらアクセルを踏み込んでいるのと同じ状態が身体の中で発生してしまいる状況です。

このような状態で大腿四頭筋を使い続けると、大腿四頭筋が必要以上に発達して、強靭で硬い前腿が出来上がってきます。

そうすると、大腿四頭筋に関連する筋膜や靭帯に拘縮が生まれて、走る際に膝関節周辺にストレスがかかってしまい炎症を生み出す原因になってしまいます。

また、大腿四頭筋を主動にランニング動作を行ってしまうと、どうしても重心が落ちてしまうので、腰が落ちるようなフォームになってしまいますし、重心が低い分、着地動作をする度に、膝関節に必要以上の負荷がかかってしまいます。

ランニングをする際は大腿四頭筋ではなく、大腰筋を使って股関節を動かせる様になると、必然的にハムストリングや大臀筋も機能するので、膝にストレスをかけることなく身体をスムーズに前進させることができるようになります。

ランニングする際は、前腿偏重ではなくインナーマッスルやアクセル筋(主に大腰筋・ハムストリング・大臀筋)と呼ばれている筋肉を使って走るようにしてみましょう。

足の着地ポジションが最適ではない

「足をどこに着地させるのか?」という点も、膝の痛みに大きく関係してきます。

膝に痛みが発症してしまっている人の走り方の特徴として、自分の上体のポジションよりも前方に足を着地させてしまっているというのがあります。

足の着地位置が自分の上体よりも前方に位置してしまうと、着地した瞬間に大腿四頭筋に力が入ってしまうので、膝関節周辺に過度なストレスがかかってしまいます。

動きという観点から考察してみると、自分の身体のポジションよりも前方に足を着地させた場合、「足→膝→腰→上体」という順番で身体が前方に進んでいってしまうので、一歩前へ進む度に、膝が過度に曲がって膝関節への負担が大きくなってしまいます。

足の着地位置は、自分の上体の真下が理想的なポジションになります。

足を自分の上体の真下に着地させると、足を着地させた瞬間にハムストリングや大臀筋にスイッチが入って、上半身が下半身より先行して前に出るので、スムーズに身体を前方に運ぶことができるようにもなります。

運動の効率性を考慮してみても、足を上体より前に着地させる場合と、上体の真下に着地させるのでは、前者は、「脚が着地する→膝が曲がる・腰が落ちる→上体が前に進む」といった運動なのに対して、後者は、「脚が着地する→上体が前に進む」という運動になるので、単純に身体を前方に運ぶための工程が一つ減ります。

足の着地位置を変えるだけでも、動きがスムーズになって無駄な筋発揮をしなくて済むようになりますし、何よりも膝へ過度な負担をかけることなく走ることができるようになります。

着地と蹴り出しのパワーバランスが悪い

ランニングで、膝へ必要以上の負担をかけてしまう原因として、足を地面に着地する際と、地面を蹴り出す際の筋発揮の仕方の問題もあります。

ランニング運動における脚の動きというのは、「着地→蹴り出し→前方に脚を引き上げる」という順に、3つのフェーズに分類できますが、膝を怪我してしまう人は、着地や脚を前方に引き上げる際に必要以上に大きなパワーを発揮させてしまっています。

バタバタと大きな足音を立てながらランニングをしている人は、着地時に過剰な筋発揮をしてしまっている証拠なので注意が必要です。

着地に多くのエネルギーを使ってしまうと、身体を前方に進めるための蹴り出し動作でエネルギーを使えなくなってしまうばかりか、膝へ過度なストレスがかかってしまうので、痛みや炎症を発症させる原因となってしまいます。

ランニングをする際は、着地よりも地面を蹴り出す時に筋発揮させるように脚を操作してみましょう。

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