ランニングによるすねの痛みの原因と対策

「ランニングをした後にすねの裏の方が痛む…」

そんな経験をしたことはありませんか?

特に、ランニングした後にすねの周辺がズキズキと痛む場合は、シンスプリントというランニング障害が原因かもしれません。

シンスプリントは、脛骨の周りにある骨膜が炎症を起こすスポーツ障害で、脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれます。

ここでは、ランニングによるすねの痛みの種類と症状、その原因と対策を解説していきたいと思います。

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すねの痛みの症状と発症原因

シンスプリント

脛骨の内側に痛みを引き起こす症状を『シンスプリント』と言います。

ランニングや継続的なジャンプ運動、急激な体重移動など、下肢に反復的な負荷がかかる運動を行う際によく発症します。

下肢に反復的な負荷かかると、スネの内側、後ろ側の筋肉やそれを包んでいる筋膜が繰り返し引っ張られることで骨膜にストレスがかかります。
このストレスが骨膜という骨の表面の膜にダメージを与えることで炎症を引き起こします。

シンスプリントが発症する主な要因

・局所への過度なストレス:  
急に運動を始めたり過度な運動を繰り返したりすると、下肢に負荷がかかり発症します。
特に硬い地面でのランニングやジャンプ運動などを繰り返すと発症のリスクが高まります。

・筋肉の問題:
下肢の筋肉、特に脛骨周囲の筋肉が硬い場合、脛骨に付着している骨が引っ張られることで、脛骨に過度の負担がかかり痛みや炎症が発症します。

・足部のアライメント不良:
扁平足な回内足、オーバープロネーション(過剰回内)やサピネーション(過剰回内外)など、地面からの衝撃を足底で吸収できない場合に、脛骨周辺への負担が蓄積されてしまいシンスプリントが発症します。

シンスプリントの主な症状

・脛骨に沿って痛みや圧迫感が生じる
・運動時や運動後にすね内側の中央から下方1/3にかけて、ズキズキとした痛みが生じる
・一般的には、運動を止めると痛みが軽減する
・症状が悪化すると安静時でも痛みを伴うことがある

疲労骨折

シンスプリントの他にも、すねの内側が痛くなるケガの一つに『疲労骨折』があります。

痛みを伴う部位に皮下出血や腫れがある場合は、シンスプリントではなく疲労骨折の可能性が高くなります。 また、シンスプリントの場合、痛みを感じる部分が10センチ程度と長く、約40%は両足のすねに症状が出るのが特徴ですが、疲労骨折の場合は、片方のみに発症するケースがほとんどで、5センチ以下のピンポイントで痛みが発生します。

疲労骨折が発症する主な要因

・過度の負荷:
長時間の持続運動や、ランニングやジャンプ運動を伴うスポーツをすることで発症します。
同じ部位(骨)に対して、継続的な小さい負荷が加わり続けることが原因で発症します。

・筋力不足:
周囲の筋肉が十分に強くない場合、骨にかかる負荷を補おうと周辺の筋肉の活動が活発になり過ぎてしまい、骨に付着する筋肉の牽引力が増えて疲労骨折のリスクが高まります。

・骨密度の低下:
骨粗しょう症や栄養不良など、骨の密度が低下している場合、骨の耐久性が低下し、疲労骨折が生じやすくなります。

疲労骨折の主な症状

・骨折部位や周囲の広い範囲に痛みが生じる
・ランニング中や負荷がかかった時に痛みが増す
・折れた部位や周囲に軽度の腫れが生じる
・折れた部位に圧迫を加えると痛みが増す

すねの痛みが発症しやすい走り方と対処法

ランニングによるすねの痛みの要因は、シンスプリントでも疲労骨折でも、すねに過剰に負荷がかかってしまっていることが原因であることがほとんどです。

ここでは、すねに過剰に負荷をかけてしまう人の走り方の特徴と対処法をご紹介してみたいと思います。

脛骨ではなく腓骨に荷重がかかっている

すねの骨には、「脛骨」と「腓骨」という2つの骨があります。

脛骨というのは、主に下肢の体重を支える役割を担う荷重骨になります。
つまり、ランニングの着地の瞬間は、この脛骨に自分の体重が乗る状態が一番身体にストレスを与えない状態になります。

着地の瞬間に脛骨に体重が乗らない場合、前脛骨筋や後脛骨筋(共にすねの筋肉)、腓腹筋やヒラメ筋(共にふくらはぎの筋肉)に、余計な筋出力が必要になってきてしまうので、脛骨周辺の骨膜にストレスがかかってしまい炎症を引き起こすリスクが高まってしまいます。

また、すねには腓骨というもう一つの骨があります。

腓骨はジャンプ運動時のショック吸収や足首から先の運動(足首の底屈・背屈)に関与する骨になります。

例えば、ランニングの着地時に脛骨ではなくて腓骨で自分の体重を捕らえてしまうと、腓骨は脛骨と違って細い骨になるので、腓骨だけでは自分の体重を支えることがでずに腓骨周辺の筋肉でそれを補おうとするメカニズムが働きます。

こうなってしまうと、腓骨周辺の筋肉が過剰に発達して硬くなってしまうので、周辺の骨膜に影響を与えて炎症や痛みを誘発させてしまいます。

すねに過度なストレスを与えない3つのポイント

すねに過度なストレスを与えずに走るポイントはいくつかあります。

1つ目が、足裏の荷重位置です。
足を地面に着地した時に、つま先や踵に体重が乗っかり過ぎてしまうと、着地時の地面に対する脛骨の挿入角度に不具合が生じてしまって、脛骨周辺にストレスを与えてしまいます。

着地をした時は、足裏の脛骨直下に重心位置を置くことで脛骨周辺に過度な負荷を与えずに走ることができます。

2つ目が、足の着地位置です。
足を上体より前方に着地させてしまうと、足を上体の真下に着地させるよりも、身体を前方に移動させる際に脛骨や腓骨に余分な負荷がかかってしまいます。


足を地面に着地させる時は、脛骨を地面に対して垂直にポジションを取ることで、筋膜や骨膜へのストレスを軽減することができます。

3つ目が、足底のバランスです。 足部にオーバープロネーション(過剰回内)やサピネーション(過剰回外)が見られると、荷重骨である脛骨にバランスよく体重が乗らずに、周辺の筋肉や筋膜、骨膜に悪い影響を与えてしまいます。

特に着地の際に、拇指球、小指球、脛骨直下を線で結ぶトライアングル(足裏の3本のアーチ)をバランスよく使ってあげると、結果として脛骨への負担を減らすことができます。

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